

高木 淳二
(日本ヘリコプタ技術協会 会長)
昨年から今年にかけて宇宙分野では喜ばしいことが続いた。宇宙開発事業団がH2Aを5回連続で打上げに成功させたし、宇宙科学研究所ではM5型機で「はやぶさ」(MUSES-C)の打上げを成功させた。H2Aの5回連続成功により、標準型による事業は2005年度打上げから民間に移管されることになった。民間活力で更なる事業拡大を遂げて頂きたい。「はやぶさ」は来年のスイングバイを経て2005年には3億キロ離れた小惑星に到着。2007年夏頃に地球に戻ってくる計画である。5月28日にはイオンエンジンにも点火出来て順調である。若者に夢を与えられる計画の今後が楽しみである。
航空分野でも、固定翼関係では、防衛庁による大型機の開発が行われているし、民間企業による小/中型旅客機開発構想も新聞に取り沙汰されている。回転翼関係では防衛庁のAHの開発が始まっている。ただ、民間ヘリコプターを見てみると、それほど順調とは言えない。日本経済低迷の影響を受け、これまで当協会の活動を支えてくれていた企業の一つの(株)エースヘリコプタが昨年限りでヘリコプタ業界から撤退してしまった。まことに残念なことであった。国産ヘリコプタの販売も低迷している。このような状況を改善して需要開拓を図るために、ヘリコプタ製造業界、ヘリコプタ運航業界、学識経験者、及び行政の参加を得て「ヘリコプタ活用懇談会」で議論された。この詳細については本書に詳しくまとめられているのでご参照頂きたい。
日本経済は未だにバブル崩壊後の後遺症から立ち直れていない。株安も下げ止まらず、5月にはりそな銀行に公的資金が注入される事態まで起こった。今年2月にはSARS騒動が始まり、中国に進出していた日本企業の中には休業を余儀なくされた所も出た。加えて、2月の米英のイラク開戦があり、日本経済に大きく影響している。向い風の状況が続いているが、こういう時にこそ元気を出して対処していくことが肝要ではないだろうか。
日本ヘリコプタ技術協会の昨年度を振返ってみると、先ずは昨年6月の総会に合わせて「ヘリコプタ事始め50年」の講演会を皮切りに、11月には日本ヘリコプタ技術協会としての大事業であるHeliJapan2002を成功裏に終了できた。特にHeliJapan2002では、会員の皆様のご協力の他、現地で受付や案内等にご協力頂いた企業の皆様に大変お世話になった。これらの方々から国際会議開催に関わるノウハウもお聞き出来たので、次回のHeliJapanは更に立派なものに出来ると信じられる。会議開催に関与された皆様方に厚く御礼申し上げる。
衝撃的な事故が起きた。日本時間2月1日午後11時頃に起きたスペースシャトルコロンビアの空中分解事故である。原因はほぼ特定されているようであるが、1986年のチャレンジャーの事故を乗り越えたように、今回のコロンビアの事故も乗り越えて日本の「きぼう」建設に漕ぎ着けて欲しい。お亡くなりになった乗り組み員7名のご冥福を衷心よりお祈り申し上げる。
私事で恐縮であるが、昨年10月から宇都宮大学工学部に転職した。新しい工学教育を担当している。学生にものづくりの面白さを教え、自主的活動を通じて創造性、独創性を育ませるのが仕事である。日本経済が再び元気を取り戻すには製造業の強化が不可欠である。そのためには、日本が一度世界の頂点にたった時の追いつき追い越せではなく、革新的発想で世界に類を見ないものづくりを創造して行く他はない。このような教育は大学だけで出来るものではなく、幼稚園から社会人になった後にも必要である。若年者層に対する教育という観点からも、日本ヘリコプタ技術協会の活動を考えて行きたい。
(AHSJapan、2003.8.31)
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