<2003年度会報>

ヘリエクスポに見るHAIの活動

西 川   渉

 

 毎年初めに開かれる「ヘリ・エクスポ」は、その年1年間のヘリコプター界の先行きを占う行事でもある。世界中のヘリコプター関係者が集まる3日間の会合が活気あふれるものとなるか、どのような方向を示すかによって、今後の動向について見当がつく。

 かつて、1970年代の石油危機の当時は世界中で油田の開発が盛んになり、ヘリ・エクスポの会場も石油関連の展示でいっぱいになったことがある。まるで石油業界のコンベンションかと思うほどであった。同様に近年は救急医療に関連する展示が多い。これでヘリコプター企業やメーカーの関心の向く方――ということはビジネスになる方向が分かろうというものである。

 そうした観点からすると、今年の展示は救急機に加えて警察機や消防機の展示が多く、警察・消防・防災関連の機器も多いように見受けられた。9.11テロの影響から危機管理の意識が高まり、米政府の本土保安体制の強化が影響しているのであろう。


会場風景

50機以上の受注発表

 今年の「ヘリ・エクスポ2003」は去る2月なかばの3日間、テキサス州ダラスで開催された。世界的な経済不況とイラク戦争前夜のけわしい雲行きの中、どんな会合になるのか不安もあったが、意外に賑やかであった。主催者の国際ヘリコプター協会(HAI)によると、出展したのはヘリコプター・メーカーを初めとする469の企業、団体、政府機関などで、前年比およそ15%増。参会者は12,877人で、4年来の最高だそうである。

 ただし展示されたヘリコプターは44機に減った。例年の60〜70機にくらべてやや寂しい。というのは、即売のために毎年多数の機体を並べる大手中古機ブローカーが最近倒産し、その展示がなくなったためとか。不況の風は決して弱くないのである。

 そのうえ米国では9.11テロの後遺症で航空保険料が上がり、飛行禁止区域が広がった。そのため解散や倒産に追い込まれたのは、ブローカーばかりでなく、ヘリコプター運航会社の中にも見られた。

 とはいえ、開催期間中に発表されたヘリコプターの受注数は50機を超える明るい結果となった。昨年は20機に満たなかったから、大きな伸びである。

 受注数のうち15機は、シコルスキーS-76C+に対するオフショア・ロジスティック社からの注文である。同社はほかに24機の仮発注も出した。さらにシコルスキー社は型式証明を取得したばかりのS-92について5機の確定注文を受けた。量産1号機は来年のヘリ・エクスポでカナダのクーガー・ヘリコプター社に引渡される。

 イタリアのアグスタ社はA119コアラ単発機について、ペンシルバニア州警察から2機、ニューヨーク市警(NYPD)から4機の注文を受けた。NYPDはさらに2機を仮発注している。シュワイザー小型機は会期中に6機の注文を受け、エンストロームも3機の注文を受けた。

 またユーロコプター社はEC155を2機、EC135を2機、EC130を1機受注した。MD902エクスプローラーも5機の注文を受けたが、このうち3機は英国から、2機は日本からという。これで日本のMDエクスプローラーは14機になる。

 ベル・ヘリコプター社は会期中9機の受注を発表した。うち4機はベル412、3機はAB139、そして427と430が1機ずつである。

 さらに景気のいいのはロビンソン社で、4人乗りのR44レイバンU小型レシプロ機について会場で5機の注文を受けた。レイバンUは昨年11月、燃料噴射式のエンジンをつけて売り出された新しい製品で、3か月ほどの間に130機を受注。それにR22を合わせると、今年1月の受注だけで90機を超え、うち50機はわずか1週間の注文だったらしい。フランク・ロビンソン社長自身も「息がつまるほどびっくりした」と語ったほどである。

HAIとAHS

 さて本稿は、HAI大会への参加報告をするようにとのご依頼である。しかしヘリコプターの専門家の皆さんに展示機や受注機の説明をするつもりはない。そんなことをすればお叱りを受けるだろうから、ここでは以下、今回のヘリエクスポに即して、国際ヘリコプター協会(HAI:Helicopter Association International)の活動ぶりをご紹介しよう。

 HAIは運航者の団体である。世界各国のヘリコプター運航事業者に加えて、警察、消防などヘリコプターを使用する公的機関、ビジネス機や自家用機としてヘリコプターを飛ばしている一般企業が会員になっている。会員数はおよそ2,300。それに対して、わが日本ヘリコプタ技術協会の親元AHSインターナショナルは研究者、技術者、運航従事者など、個人会員が主体である。

 その点がHAIとAHSとの違いで、企業が主体であるだけにHAIの方が経済的な規模は大きい。ただし賛助会員はヘリコプター・メーカーを初め、関連機器メーカーや団体など、双方共通したところが見られる。

 HAIの役員は、会員の中から立候補者が出て選挙で選ばれる。多くはヘリコプター運航会社の社長や重役さんたちである。その中からチェアマンが選ばれる。2年間の任期が終わると、木製の真っ赤に塗った玩具の椅子が記念に贈られる。

 ほかに常勤の事務局があり、その最高責任者がプレジデントである。日本ならば理事長とか専務理事というところであろうか。現在はロイ・リサベッジ氏(Mr. Roy Resavage)がその任に当たっている。直接聞いたところでは、元海軍のヘリコプター・パイロットで、ベトナム戦争にも参加したことがある。

 氏は海軍退役の時期にあたって偶然、HAIがプレジデントを公募しているのを知った。来てみると十人以上の応募者がいて、これは駄目だと思った。ところが最後の3人の中に残り、HAIの役員全員の面接を受けて合格することができた。そう言いながら、氏は「面白くてやり甲斐のある仕事を与えられて、感謝している」と語った。


Roy Resavage, President of HAI (press meeting)

議会でもさまざまな証言

 リサベッジ氏の就任から数年間、私は1年に1度ずつしか会っていないが、誠実な人柄で頭の回転がはやく、しかもバイタリティにあふれた人のように見受けられる。とすれば、業界団体の責任者といっても天下りではなく、仕事のできる人を選任しているということになる。たしかに、決して裕福ではないヘリコプター業界が、団体をつくって事務局を置くからには、それなりの仕事をして貰わなくてはならないだろう。

 事実、リサベッジ氏は議会や政府に働きかけ、最近も法規の制定や改正に関してさまざまな発言をしている。

 たとえば昨年秋の米国議会に「国土管理法」の改正案が上程された。米国では毎年、広大な山林が火災のために焼失する。昨年は700万エーカー――四国の1.5倍ほどの森林が燃えてしまった。しかし対応策は予算不足のため、消火活動も植林作業も満足にできない状態にある。

 そのため法律を改め、山火事の消火活動に国防省の応援を増やそうというのが改正案の趣旨である。その審議に当たって、下院資源委員会はリサベッジ氏を招き、意見を聴いた。氏はHAIとして、この改正案に反対する証言をおこなった。

 今の法律では、消火作業に航空機を使う場合、民間機(commercial equipment)の消火能力が限界に達したときにのみ、政府の機材が使えるという定めになっている。法規上の定めはもっと複雑で、何をもって民間能力の限界とするか、誰が判断するかなどの問題がこまかく定められているが、現行法規でも軍の応援ができないわけではない。したがって今ここで新しい法規を制定しなくても山火事対策はできるはず。問題は予算額にあるというのが証言の内容である。

 これが昨年秋のことだったが、そんな複雑な規定にしたがって行動していては消える火事も消えなくなると考える議員もある。そこから最近「林野火災対策強化法」なる法案も出てきた。農林省や内務省があらかじめ国防省などの政府機関と協定を結び、山火事発生のときはいつでも軍の応援を求められるようにするというのである。

 HAIはこれにも強く反対し、議員や森林局、内務省に働きかけ、法案の議会通過を食い止めようとしている。この法律が成立すれば、民間事業者は軍との競争を強いられることになる。軍用機など税金で買った機材で民間事業を妨害するのはアンフェアであり、本来政府の仕事ではない。軍隊が出動する前に、先ずは民間機を最大限に活用すべきだというのがHAIの主張である。

ヘリコプター専用の航行援助施設

 議会や政府に対するもう一つの活動例は、ニューヨーク周辺15マイルの範囲を飛行禁止区域にしようという法案の阻止である。これは9.11テロのあとの一時的な禁止措置を恒久的なものにする動きで、そんなことをすれば民間ヘリコプターの発展を阻害するばかりか、ニューヨークが世界経済の中心であることから経済界の損害も大きいというのがHAIの考え方である。

 その考えをもって、リサベッジ氏は議会で次のように証言した。「ヘリコプターはリクリエーションのための乗り物ではない。サンデー・パイロットの娯しみのために飛ぶわけではない。フォーチュン500に挙げられているようなトップ企業の大多数が、業務推進の必要性からヘリコプターを使っているのである。マンハッタンの3か所の公共用ヘリポートでは年間10万回もの発着がおこなわれていた。それが9.11テロ以来禁止となったが、その損害はヘリコプターの運航者にとっても利用者にとってもはかりしれないものがある。ヘリコプターは決してニューヨークに害を与えるものではない。利益をもたらすものである」と。

 むろんHAIは反対ばかりしているわけではない。今AHSと組んで議会に働きかけている課題は、メキシコ湾の海上にヘリコプター専用の気象と通信のインフラ整備をすることである。メキシコ湾には現在3,800か所に石油生産用のプラットフォームがあり、そこで仕事をしている人口は35,000人に上る。その人びとの陸地との往来のために、ヘリコプターは毎日5,000〜9,000回の飛行をしている。

 にもかかわらず、この海域にはヘリコプターの航行を援け、安全を確保するための設備がどこにもない。これだけ頻繁な飛行が行われている地域であれば、管制施設があって、通信や監視、さらには気象情報の提供などがなされて当然、というのがHAIの主張である。そこでHAIはFAAと議会に対し、ヘリコプターの低高度運航に適したインフラ整備をするよう働きかけをはじめた。

 当面はVHF通信施設と自動気象通報装置を置くだけでも問題解決に向かって前進することになる。そして長期的には衛星利用による通信および監視システムを設け、全米空域システムの一環として組み入れるべきであるとしている。

 高層ビルの緊急用離着陸施設

 こうした問題を検討し、考え方をまとめるために、HAIには下表の通り、いくつもの委員会が設けられている。普段は委員だけの集まりだが、HAI大会に際して開かれる各委員会には会員の誰が出席しても構わない。そのことによって、それぞれの委員会が今どんな問題を取り上げているか、どのような考え方を取ろうとしているのかが分かるし、それがいいか悪いか、賛成か反対か、誰でも発言することができる。

 

騒音環境委員会(Acoustics/Environmental Committee)

農薬散布委員会(Aerial Applications Committee)

森林育成委員会(Aerial Forestry Committee)

航空医療委員会(Air Medical Committee)

経済問題委員会(Economics Committee)

報道取材委員会(Electronic News Gathering Committee)

飛行空域委員会(Flight Operations Committee)

フライ・ネイバリー委員会(Fly Neighborly Committee)

政府契約委員会(Government Contracting Committee)

公用航空委員会(Government Services Committee)

遊覧飛行委員会(Helicopter Tour Operators Committee

ヘリポート委員会(Heliport Committee

航空保険委員会(Insurance Committee

立法行政委員会(Legislative Advisory Committee

製造企業委員会(Manufacturers’ Committee

油田支援委員会(Offshore Committee

広報活動委員会(Public Relations Advisory Council)

規程改善委員会(Regulations Committee)

特殊機材委員会(Restricted Category Aircraft Committee)

安全推進委員会(Safety Committee)

技術向上委員会(Technical Committee)

作業安全委員会(Utilities, Patrol, and Construction)

 実はここで各委員会の役割と当面する課題についてご紹介しようと思ったが、紙数がないので次の機会に譲ることとし、ヘリポート委員会だけを取り上げたい。同委員会では、高層ビルの緊急用ヘリポートのあり方について検討がなされた。

 高層ビルで火災が発生した場合、ヘリコプターは消防隊や救急隊のすぐれた支援手段となる。そのことを具体化するために、FAAは1990年代初め「ヘリポート・デザイン・アドバイザリー・サーキュラー」(AC150/5390-2)の中で緊急用離着陸施設の有効性を強調し、高層ビルの建築に際しては設計段階から屋上にヘリコプター用の施設を設けることが望ましいとした。

 この勧告に当たってFAAは、ビル火災におけるヘリコプターの活動ぶりを、いくつもの実例について調査分析している。その結果ヘリコプターは高層ビルの火災にきわめて有効だが、そのための緊急用施設があらかじめ設けてなかったところでは、屋上の縁に片足で着いたり、接地できずにホイストを使ったり、結果として人命救助や消火活動に成功はしたものの、実際は危険な場面もあった。あらかじめ準備してあれば、もっと安全に効率よく救助活動ができたはずという実例がいくつも見られたのである。

 こうして現在、ロサンゼルス、サンディエゴ、パサデナなどの都市がFAAの勧告にしたがって条例を制定し、高層ビルの屋上には緊急用着陸施設(EHLF:Emaergency Helicopter Landing Facility)をつくるよう義務づけた。しかし、このような条例を持つ都市はまだまだ少ない。

 そこで今回のHAIヘリポート委員会では、今後さらにEHLFを増やすべく、各地の都市に働きかけてゆくことが決議された。同時に、EHLFを義務づける条例のモデルをつくって、各自治体の担当者のところへ持ち込み、具体化の一助にしてもらうことも決議したのである。

閉ざされた非常口

 余談ながら、EHLFのようなものを設けると、ちょっとした火事でも屋上に逃げる人が増え、却って危険を招くというヘリクツがある。確かに屋上よりも地上に逃れる方が安全で助かる率も大きい。FAAの勧告の中にも、EHLFを設けた場合、ビル管理者はテナントに対し、余程のことがない限り屋上よりも階下に向かって避難するよう、あらかじめ注意しておくことを求めている。

 それに関連して、9.11テロのとき、ニューヨークのワールド・トレード・センター(WTC)では突っ込んできた旅客機のために途中の階が何層にもわたって火の海となり、やむを得ず屋上に向かった人が多かった。しかし助かった人は1人もいない。というのは何たることか、屋上に出る非常口に鍵がかかっていたからである。もし非常口が開いていれば、WTCの屋上には北棟も南棟もEHLFが設けてあったから、上空に待機していたNYPDのヘリコプターで救助されたであろう。

 なぜ鍵がかかっていたのか。1993年WTCの地下で起こった爆弾テロの際、警察のヘリコプターが多数の人を屋上から救出したが、あれは危険なやり方だったという意見が消防から出され、双方の見解が合わないまま非常口がロックされてしまった。

 無論これはEHLF設置の是非とは別の問題だが、屋上に建てられた放送用のアンテナ機器が盗まれるといった問題もあって、一筋縄ではゆかない課題となっている。

HAIの運航実態調査

 HAIは、会員の運航実態調査をしている。昨年夏には2001年度の運航実績に関する調査がおこなわれ、その結果が今回のHAI大会で公表された。

 HAIに加盟する2,300の運航者――ヘリコプター事業会社、警察や消防などの公的機関、そして自家用機を保有する報道機関や一般企業などを対象とするアンケート調査である。

 その結果は回答数が221通。一見少ないように見えるが、回答者の運航しているヘリコプターは総数1,950機、飛行時間は110万時間に上る。また、このうち179通が米国内からで、残り42通が国外からのものであった。

 報告書はA4版80頁余り。アンケートの結果を要約すると次のようになる。

(1)1,950機のヘリコプターによる飛行時間は1機平均566時間。ただし運航者の保有規模による差異が大きく、1機しかもたない運航者の飛行時間は平均270時間である。逆に8機以上の保有者は1機平均602時間を飛ばしている。

(2)これらの機材はどのような形で購入されたか。運航者の23%は新製機を買い、37%は中古機を買い、40%は両方を買っている。また1機当りの帳簿価格は現在、平均145,000ドルである。

(3)運航経費の中では人件費(24%)、整備費(23%)、保険料(16%)が大きい。ほかに「法的費用」(Regulatory Costs)――航空法などに定められた手続きに要する費用が総経費の1割程度かかっていて、運航者の多くがこの経費は増えつつあると回答している。減少したという回答は1通もなかった。

(4)回答者の59%――約130社がヘリコプター事業会社であった。これらの企業が運航するヘリコプターは、上記1,950機の87%――約1,700機である。したがって1社平均の保有機数は13機となる。ちなみに日本の事業会社の平均保有機数は、筆者の調べた29社については、2001年度の運航総数が467機で、1社平均16.1機となる。

(5)事業会社の収入は従業員1人当り158,000ドル。米国だけを取ると1人当り172,000ドルの収入となる。ちなみに日本の事業会社は、2001年度の従業員数が1,912人、収入が407億円だったから、1人当り2,120万円――約177,000ドルであった。

(6)事業会社の収入源は石油ガスの開発支援が57%、救急業務が16%を占め、この両者が世界のヘリコプター事業の基盤をなしている。一方、日本の収入源は2001年度の場合、最も多い物資輸送が15%にすぎない。かつては20年以上にわたって25%から30%近くを占め、1996〜97年には3分の1に達したほどである。

 薬剤散布も11%に減少した。1980年代なかばには収入の30%に達し、物資輸送と合わせると、1980年代には55%前後、ときには6割を超える2大事業として、わが国のヘリコプター事業の基盤を形成していたのだが。

(7)HAI調査の事業会社で利益を挙げている企業は半分以下。52%の企業が赤字を出している。しかし1機あたりの飛行時間が多い企業は利益を出していて、1機平均750時間以上を飛んでいる企業は79%が利益を計上している。逆に250時間以下で利益を出しているところは43%である。日本では2001年度、利益を出した事業会社は28社中17社であった。これら事業機の平均飛行時間は年間1機196時間にとどまる。

功労者の表彰晩餐会

 ヘリ・エクスポでは最終3日目に表彰晩餐会を開く。この1年間、民間ヘリコプター界の発展に功績のあった人を表彰するもので、今年は13組が表彰された。

 その一つは香港の政府飛行服務隊に与えられたシコルスキー社の「人道的行為に対する賞」で、2002年9月11日、台風の中で遭難した2隻の漁船から21人を救助したというもの。このときの海上は大シケで、風雨のために視界も悪かった。救助作業の途中でロープが切れたりしたが、複数のヘリコプターで何とか全員を助けることができた。

 この飛行服務隊は過去20年来、香港沿岸はもとより、洋上1,000キロの南シナ海へも出動し海難救助をつづけている。現用機はスーパーピューマが3機、EC155が5機、ジェットストリーム41ターボプロップ機が2機。表彰式には何人かの代表隊員が出席し、数千人の参会者からスタンディング・オベイションを受けた。


一昨年のパリ・ショーで見た香港政府飛行隊のスーパーピューマ

 

 同じくスタンディング・オベイションを受けたのは、テキサス州オースチンで救急業務に当たる「スターフライト」チーム。2001年11月オースチン一帯がハリケーンに襲われ、大洪水が発生した。このときスターフライトの2機のヘリコプターは、毎秒30メートルの強風と豪雨の中で24人を救助した。もしヘリコプターがなければ、この人びとは濁流に流されたり、孤立したままで命を亡くしただろうといわれている。

 スターフライトは1985年に発足、現在は2機のEC135をもって連日、救急活動にあたっている。受賞したのはユーロコプター社の「ゴールデン・アワー賞」であった。

 

ヘリコプターの殿堂

 こうした表彰のほかに、今回は2人の重要人物のヘリコプター殿堂入りが発表された。この殿堂(Heritage Hall of Fame)は2001年、HAIの支援の下に国際ヘリコプター財団(HFI:Helicopter Foundation International)が設立したもの。ヘリコプター界の進展に貢献した先駆者たちの先見と才能と忍耐と手腕を顕彰するのが目的である。

 最初の2001年はイゴール・シコルスキーとカール・ブラディ、2002年はフランク・パイアセッキとジム・リックレフスが殿堂入りをした。シコルスキーとパイアセッキは周知のとおりである。あとの2人はヘリコプターの運航事業分野で功績を残している。

 カール・ブラディは1948年ベル47をもってERAヘリコプター社を設立、アラスカとメキシコ湾で石油開発の支援運航をおこない、今ではERAアビエーションの名前で、コミューター航空も運営している。

 ジム・リックレフスも1948年、2機の中古ヘリコプターでリック・ヘリコプター社を設立、カリフォルニアに拠点を置いて薬剤散布、送電線パトロール、測量写真撮影、人員輸送、消火作業など、ヘリコプターのあらゆる分野で運航事業を展開、1950年代には世界最大のヘリコプター会社となった。

 そして今年は、スタンレー・ヒラーとロバート・サッグスが選ばれた。ヒラーについてはご存知の通りである。サッグスは1949年、ペトロリアム・ヘリコプター社(PHI)を設立した。メキシコ湾の油田支援によって事業を拡大し、最盛期にはアメリカ軍とソ連軍に次いで世界第3位のヘリコプター・フリートを擁すると言われたほどである。1989年に亡くなったが、その後をキャロル夫人が引き継ぎ、石油支援に加えて新たに救急業務にも乗り出すなど事業を拡大した。


殿堂入りの栄誉を受けて、記念の盾を手に挨拶するスタンレー・ヒラー氏

 

 私は、この殿堂入りの発表と顕彰の会に出ていて、日本でもそろそろ航空やヘリコプターに関する「名誉の殿堂」(ホール・オブ・フェイム)を考えるべき時期がきたのではないかと思った。そんなことをしなくても、わが国には政府による勲章や表彰の制度があるといわれるかもしれぬが、それとこれとは異なる。

 同じ栄誉を受けるにしても、勲章や表彰状は受賞者の手もとにしまい込まれるだけだが、殿堂はその人の遺した記念の物品や記録その他の資料を集め、公開展示をして、誰でもいつでもその人物の業績に接することができる。つまり栄誉をたたえるだけでなく、人物を主題とする一種の博物館とするもので、一般社会に対する教育と啓発の一助となるのである。

 ヘリエクスポ2003は、まことに刺激的な3日間であった。ヘリコプターの先行きも明るいと見てよいであろう。

 

【関連頁】

 戦争前夜の祭典

 ヘリ・エクスポに見る緊急対応ヘリコプター 

『日本ヘリコプタ技術協会2003年度会報』掲載) 

 

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